【その⑪】インパクトでは、腕に力を入れないとボールが飛ばないと思っている人
レッスンをしていると、よく聞かれる話です。
確かに、ある程度の力は必要でしょう。でも、意識的に腕に渾身の力を込めるというのはお薦めできません。
私の経験上、一流のアスリートでもない限り、腕力をスピードに変えられる人は100人に1人か2人です。
多くの人は、腕(手)に力を込めると逆にヘッドが走りにくくなるからです。関節が柔らかく使えなくなり、腕は棒のようになります。「腕はムチのように使う」とよく言いますが、ムチは無理でも、せめてヌンチャクのように使いたいものです。硬直した腕は、クラブの動きにブレーキをかけてしまうのです。
飛ばしたいからと力を込めることで、クラブの動きを妨害し、飛ばすための条件であるヘッドスピードが落ちるなんて皮肉なことです。
ボールに当たる抵抗については、心配しなくても大丈夫です。ボールはニワトリの卵より軽いのです。鉛の玉を飛ばすわけではないのです。ボールより重たいクラブが秒速30~40mのスピードで振り下ろされてくるのです。ボールに弾き返されることはありません。
仮に感情のないスイングロボットがいたとしたら、ボールを打つ時と素振りは全く同じスイングでしょう。
人間には不可能に近いですが、おそらくインパクトの究極の理想は、素振りのように通過点でとらえることです。
皆さんも経験があるはずです。素晴らしいショットが打てた時は、驚くほど腕に無駄な力が入っていないことを!
<レッスンプロの心の声>
~女子プロのスイングを見ましょう。腕力ではなさそうですね~
【その⑫】平均スコアが100前後で90を切ったことがないレベルなのに、ボギーで不満がる人
でも、それはかなり確率が低く、残念ながら偶然に近い出来事です。それを当たり前のように何ホールも続けることが出来るのが上級者なのです。
多くのアマチュアゴルファーは100切りが1つの目標であり、次に安定して100を切れることを目指します。そういう大多数のゴルファーにとって、ボギーはトッププロのバーディに匹敵する価値があるのです。ボギーとダブルボギーが半分ずつで100を切れるからです。(ちなみに、全てダブルボギーでも108です)
そう考えれば、多くのアベレージゴルファーがボギーで落ち込むなんてナンセンスです。むしろ喜ぶべきなのです。クラブを叩きつけたくなる気持ちも少しは和らぐでしょう。
80台を目指している中・上級者は、ボギーをパーとみなせば気が楽になります。
物は考えようです。パーは70台でラウンドする人の基準です。
<レッスンプロの心の声>
~パーが簡単に取れるなら、とっくに80前後で回れてます!~
【その⑬】ラウンド後に、その日のプレーの振り返りを全くしない人
「このホールで10打叩いてしまったのはどうしてですか?」『確かティショットでOBして、そのあと……』
「このショートホールのスコアが6になったのは?」『う~ん…』
ラウンドの報告を受けるときによくある会話です。
ゴルフは自然が相手であり、練習場と本番のフィールドが大きく異なるスポーツです。状況もバリエーションに富んでいます。
ですから、ラウンド中に様々な成功や失敗を繰り返し、経験を積み上げ、生かしていくことで上達します。その多くの経験をほとんど復習しない人は、経験値が上がらず何度も同様のミスを繰り返してしまいます。
上級者は、ラウンド後にその日の一部始終を大抵説明することができます。もちろん打数が少ないから覚えやすいということもありますが、繰り返し振り返ることで訓練されていくのです。
(つわものは、初めてのゴルフ場でもコースレイアウトまで覚えています)
全ては難しいので、まずは4つのショートホールだけとか、最後の3ホールだけとかでもいいので、振り返るクセをつけてみましょう。
自分のよくやってしまうミスの傾向や大叩きの要因などがきっと見えてくるはずです。
<レッスンプロの心の声>
~何事も、上達には復習が大切ですね。特にゴルフは…~
【その⑭】スコアが縮まらないのは、飛距離のせいだと信じて疑わない人
男性Aさん「僕が100を切れないのは、ドライバーが200ヤード位しか飛ばないからで、230ヤードは打てるようにならないと…」
女性Bさん「私、UTは得意なんだけど、距離のほしい所でFWがチョロばっかり。だから120を切れないのよね」
どちらも間違っていると言わざるを得ません。
ロマンを求めるのは分かります。他人より1ヤードでも前に飛ぶと、優越感に浸れるのも理解出来ます。ただ、ドライバーが平均200ヤード飛ぶなら、間違いなく100は切れます。仮に180ヤードでも十分です。2打目以降の精度次第では90も切れます。要は飛距離ではなく確率です。
FWを打てなくても120は切れます。110も切れます。FWを上手く打てないからではなく、上手く打てないクラブを打ち続けるからです。他に、もう少し上手く打てるクラブがあるならそれを使えばいいのです。BさんならUTです。ナイスショットの5UTとミスショットの5FW では明らかに5UTの方が飛びます。
110を切ってからでもFWにトライするのは遅くはありません。
飛距離は魅力ですが、1ラウンドで数発だけ飛んでも、他がチョロやOB連発ではスコアはまとまりません。確率が高い上に飛んで曲がらないことで初めてアドバンテージになるのです。
<レッスンプロの心の声>
~200Y+20Y=220Yですが、150Y+100Y=250Yです!~
【その⑮】ボールの先の芝を削ることと、ダフることの区別がついていない人
「テレビなどで、プロが打った時に芝のかたまりが飛んでいく光景を見ます。僕も同じように芝を削ることが多いけど全然ボールは飛びません。芝や土と一緒に打っても飛ぶなんてやっぱりプロはパワーが違いますね!よーし鍛えなきゃ!」
冗談かと思いますが、意外に多い勘違いです。
円を描くようなスイング軌道は、振り子運動の延長です。ブランコをイメージすると分かりますが、クラブヘッドは、下りていこうとする動きと上がっていこうとする動きがあります。その時のヘッドの動きの弧の中で、最も低い所を「最下点」と呼んでいますが、プロは「最下点」の手前でボールとらえています。これを「ダウンブロー」といいます。(ドライバーはボールを浮かせているので例外です)
よくダウンブローとは、「上から叩きつける」とか「打ち込む」ことだと考えている人がいますが、少し違います。なだらかな角度でも下り際でとらえればダウンブローです。
ヘッドが下に向かっている時にとらえるのに、ボールが上がるのは少し不思議な感じがしますが、フェースには角度がついており、その結果ボールに上がろうとする回転がかかるのです。ボールを上げたい一心で、浮いていないボールをすくい上げようとしてもダフりとトップは止まらないでしょう。(注:マットでは少々手前でも滑るので飛びます)
ボールをとらえた後に芝を削っているのがプロです。ボールの手前の芝や土を削っているのはダフりといいます。大きな違いです。
<レッスンプロの心の声>
~今のショット、コースでは芝は飛んでもボールはあまり飛びませんよ~
【その⑯】ボールに直接ヘッドが当たったら、トップした!と勘違いしている人
この勘違いも意外に多いです。
理想のインパクトは、直接ボールをとらえることです。俗に言うトップとは、ボールの真ん中(赤道付近)よりも上部に当たってしまうことです。
それより下部でヒット出来ればボールは上がりますし、トップとは言わないのです。
練習場で、ヘッドの底がボールの手前のマットを滑るようにとらえた方が心地良く感じる時もありますが、よくある勘違いです。
ボールの手前のマットを軽くかすめる程度なら、ディボットやクロスバンカーでもない限り、コースでも大きなミスにはなりませんが、本来は直接とらえている方がより望ましいのです。
本当はナイスショットなのに、それをトップだと勘違いすると、次はトップしたくないと思い、ダフる可能性が増してしまいます。
トップかどうかの判断材料は、大雑把に言えば、ボールが上がっているかどうかです。
<レッスンプロの心の声>
~今のはトップじゃないですよ。その音でいいんです!~
【その⑰】常にピンしか見ていない人
グリーンが見えて、視界にピンが入ると、周りの状況がほとんど見えなくなる人がいます。ピンまでの距離にかかわらずです。ピン方向しか狙っていないといった印象です。
そういう人は、コース上に巧みに配置された池やバンカー、谷や大きな起伏の恰好の餌食になります。
例えばグリーンを狙う際、ピンはグリーンの右端にあり、そのすぐ右サイドに深いバンカーや池などがある場合、超一流のプロでもない限り、「賢明な」ゴルファーはピンを狙いません。ピンの左側の広い面を狙います。距離が遠く長いクラブで狙う場合はなおさらです。
自分のショットのブレ幅に保険をかけているのです。大きなリスクを回避しているのです。
上級者ほど、自分のブレ幅を理解し、使うクラブやボールのライ(状況)、その日の調子によって狙う方向を考えジャッジします。上級者ほど視野が広く、ピン以外のエリアを見ているのです。短いアプローチでもない限り、狙った所に打てる確率はそんなに高くはないからです。
時には、チャレンジも大切ですが、周りの状況に目もくれず、ただひたすらにピンにまっしぐらでは、スコアアップは望めません。きっと今までの経験が教えてくれているはずです。
<レッスンプロの心の声>
~狙い所は、その方向でいいですか?リスクも考えましょう!~【その⑱】一流プロの真似が、なぜかゴルフだけは出来ると勘違いしてしまう人
「SWでフェースを開いて、ボールをフワッと上げてボールを止めたい」
「林の中から、横に出すなんてイヤ。わずかな隙間を狙ってグリーン方向に飛ばしたい!」 これらは、一流の選手だからこそ出来るスゴ技です。才能と努力と経験に裏打ちされた上級の技術です。
「一流のプロは、トップから腰を切りながらダウンスイングに入りますよね?よし!下半身リードをマスターするぞ」
スイングについても同様のことが言えます。基本編が出来てはじめて応用編です。何事にもステップ・段階があるのです。
なぜか、ゴルフというスポーツに限って、普通の紳士淑女が、一流のスイング・スゴ技がなんとなく真似できると思ってしまうのです。
体操選手の回転技だったり、フィギアスケートのトリプルアクセルなんて、けして真似できるなんて思わないのに…。
体操選手も「でんぐり返し」から始めているのです。
「体操選手の真似なんか、いきなりしたら大ケガするけど、ゴルフはねぇ~」
そんな考え方をする人に限って、スコアで大ケガするのです。
わからないわけでもありません。「見た感じでは私にも出来そう」だったり、「アプローチが直接カップインする」など、時には奇跡的なことが起こるのがゴルフだからです。それが他のスポーツにはないゴルフの魅力・醍醐味であることは否定しません。でも、これが落とし穴でもあるのです。
時には、偶然に出来ることもあるので、イチかバチかチャレンジするのも面白いです。ただし、失敗しても笑って済ませましょう。
<レッスンプロの心の声>
~だから、言わんこっちゃない…~
(・・・つづく)